鼬(いたち)と猫と十二支
神様がこの世を治めて行くのには、年月日を示す暦を作らねばならないと考え、これを動物たちに守らせようとしました。
そこで、動物たちにあつまるようにお触れを出しました。
「おまえたちの中から12匹を選び、1年間ずつ交替で暦を守る大切な役目をしてもらう。御殿に早く着いた順から決めて行くことにする。暦の番をしたいものは、12月12日に集まるよう。」と、これを知った動物たちは(われこそ一番になりたい。)と、その日のくるのを指折り数えて待っていました。
気の早い鼬は、暗いうちから神様の御殿に駆けつけましたが、あまりにも早かったので、門は閉まっていました。
しかたがないので、鼬は門の傍らで休んでいるうちに寝込んでしまいました。
また、猫は神様のところにゆく日を忘れてしまい、だれかに聞こうと思い辺りを見回すと、鼠(ねずみ)に出会いました。
「鼠さん、われわれが神様のところへ集まる日はいつだったかね。」とたずねました。ところが、鼠は自分こそが一番になろうと思っていましたから、「あれは12月13日ですよ。」と、1日遅れの日を教えました。(これで、猫より自分の方が早く着くと)ほくそえんでいました。
しかし、まだまだ他にも動物たちがいるから油断はできないと思っていました。途中で牛に出会いました。
「牛さん、牛さん、もう出かけるのですか。」と、たずねると牛は、「おれは足がのろいから、早く出かけないと間に合わなくなる。」といいました。
これを聞いた鼠は、また悪いことを考えました。鼠は牛の背荷物の中に、そっと隠れ込んでしまいました。それとは知らぬ牛は、夜通し歩き続け御殿の門に着きました。
門の傍らを見ると、鼬がぐっすり寝ていました。牛は、鼬が目を覚まさぬうち、自分が一番だと思って門の中に入ろうとしました。すると、突然、チョロチョロと鼠が荷物の中から飛び出し、「私が一番」と名乗り上げました。
それで、暦の1番はじめは鼠(子)となりました。牛(丑)は2番目となってしまいました。次に虎、兎、竜、蛇、馬、羊、猿、鶏、犬、猪の順でやってきました。
鼬が目をさました時は、12匹の動物が入ってしまった後でした。神様は気の毒に思い「おまえは、1番に着いていた。“いたち”ということで、月のはじめの日を「ついたち」と呼ぶ。」ことに決めてやりました。
1日遅れで駆け込んできた猫は、御殿の前にはだれもいませんから、自分が1番だと思いました。入ろうとすると、門番が「これこれ今頃きて、順番は昨日で決まった。寝ぼけてないで、顔を洗ってこい。」といわれました。
猫は鼠にだまされていたことを知り、「鼠のやつ、覚えておれ!」と、その日から爪を研ぎ、鼠を見つけ次第飛びかかるようになりました。
また、猫が顔を洗う仕草は、門番にいわれてからだということです。
村の語り部 見聞録
今年も間もなく寅が終わり、卯を迎えますが、新しいカレンダーや年賀状には兎が登場しています。
暦には、十干と十二支が組み合わされていますが、後の世に庶民に理解されるため、動物を配しわかりやすくしました。その様子を子供時代に聴いた昔話がありますので紹介します。
文:舘野義久(大和村教育委員)